2012年2月10日金曜日

教師不祥事列伝 : 賄賂でハワイ旅行の校長一家 修学旅行汚職事件

賄賂でハワイ旅行の校長一家 修学旅行汚職事件
産経新聞 2012年2月4日(土)18時13分配信

【衝撃事件の核心】 学校に出入りする旅行会社の営業担当者に私的な旅行を手配させ、親族10人を引き連れて通常の半額以下の価格でビジネスクラスのハワイ旅行−。校長を務めていた中学校の修学旅行をめぐり、旅行会社の社員へ便宜を図った見返りに賄賂を受け取ったとして、大阪府泉大津市立誠風中学校の前校長、相生(あいおい)年繁容疑者(61)収賄容疑で大阪府警に逮捕された。背景には、修学旅行や制服、教材など学校に関連する利権の大きさがある。

 ■学校めぐり利権

 「仕事熱心で曲がったことが嫌いな先生だったのに…信じられない」

 学校関係者や保護者らは、逮捕の一報を聞いて一様に驚きの表情を浮かべた。相生容疑者は、朝早く出勤して� ��校の掃除をするなど真面目な教員として信頼を集めており、規律に厳しいタイプだったという。

 しかし、その裏で、贈賄容疑で逮捕された「南海国際旅行」(大阪市浪速区)の元社員、道本(どうもと)拓也容疑者(51)に、普段から個人的な旅行の手配をさせていた。ある関係者は「学校に出入りする業者から多少のサービスを受けるのを当然と思う先生がいるのは事実だ」と明かし、「かつては悪いことだという意識は薄かったが、今は通用しない」とつけ加えた。

 中堅旅行会社の男性社員は、「修学旅行や遠足などは、規模が大きいうえに繰り返し受注できる可能性が高いなど、旅行会社にとってメリットが多く、業者間の競争が激しい」と話す。多くの旅行会社では、営業担当者が受注を狙っ� �学校にしばしば足を運び、教員の私的な旅行も手配するなど、学校側へ食い込む努力を惜しまないという。

 公立小学校で教頭を務めた経験がある元教員の男性は「修学旅行の代金は税金から出るわけではないし、学校側の都合で旅行会社や行き先を決められる余地が大きい」と指摘。「どうやって旅行会社を選ぶかなどは学校によって違うが、最終的な決定権は校長が握っていることが多く、一種の利権になりかねないのは事実だ」と打ち明けた。

 平成17年には、制服などの納入で業者に便宜を図った見返りに現金を受け取ったとして、収賄の疑いで大阪府東大阪市立中学校の元教員が逮捕された。過去には、神奈川や千葉、新潟などで、学校の教材選定や野外活動をめぐる汚職事件で教員らが立件されており、問題は根� ��い。

 ■値引き310万円

 大阪府警によると、相生容疑者の逮捕容疑は、22年度の修学旅行を「南海国際旅行」に委託した見返りと知りながら、同年8月に親族10人とハワイ旅行に行くための往復航空券を破格の安値で道本容疑者から譲り受けた、としている。関係者によると、航空券はビジネスクラスで、本来は約510万円のところを相生容疑者は約200万円しか支払っておらず、約310万円分の利益を提供されたことになる。

 誠風中学校では、22年度から修学旅行の行き先や旅行会社などを変更することが校内の会議で検討されたが、最終的に校長だった相生容疑者の判断で従来通り同社に委託することが決まったという。行き先はそれまでの沖縄から広島方面に変更された。

 泉大津市教 委によると、相生容疑者は昭和52年に中学校教諭として採用され、主に同市内の中学校で教鞭(きょうべん)を執った。平成19年4月から、誠風中学校の校長を務め、23年3月に定年退職。その後は同市の臨時嘱託職員として教育支援センターで勤務していた。

 相生容疑者の逮捕後、市教委の道口源一教育長は、「誠に遺憾。生徒、保護者の信頼を裏切ることになって、大変申し訳ない」などと謝罪したうえで、「今後は十分に指導、監督を徹底し、再発防止に努めたい」と強調した。

 校長当時を知る卒業生の保護者は、「生徒の話をよく聞いてくれる、すばらしい先生だと思っていたのに…」と絶句。長女が同中学校に通っている自営業の男性は、「校長が立場を利用して賄賂を受け取っていたとは許せない。子供� �ちも大きなショックを受けている」と憤った。

 事件を受けて始まった市教委の調査によると、同市内の3中学校の教職員159人のうち、過去10年間で少なくとも61人が、道本容疑者に私的な旅行の手配を依頼していたことが判明。このうち誠風中学校の教職員は18人で、43人が別の2中学校だった。市教委は、旅行の行き先や費用を確認し、ほかにも利益の提供を受けていた教職員がいなかったかどうか調査を続けている。

 市教委幹部は「今回の事件のようなことが二度とあってはならない。再発防止のためにも実態を把握する必要がある」としている。

 ■横領事件で発覚

 生徒たちが楽しみにしている修学旅行をめぐって中学校の校長が賄賂を受け取ったいう、許されない汚職事件。発覚した� ��は意外なきっかけだった。

 大阪府警は23年4月、別の中学校の修学旅行代金として預かっていた約500万円を着服したとして、業務上横領の疑いで道本容疑者を逮捕。その後、着服した金の使いみちを捜査する過程で、相生容疑者へ常軌を逸した利益を提供していた疑いが浮上したという。

 道本容疑者は、昭和58年に「南海国際旅行」に入社し、十数年前から泉大津市内の中学校などを担当。熱心なサービスぶりで顧客から好評だったといい、19年以降は大阪南営業支店(大阪府岸和田市)の副課長を務めていた。

 しかし、23年1月、「旅行代金を着服した」などという内容の置き手紙を残して失踪。その後、21年9月〜23年1月ごろ、担当していた泉大津市内の3中学校の修学旅行代金など� ��千万円以上を横領していたことが判明した。大阪府警の調べに対し、「営業実績を上げるため、会社の金を着服して顧客の値引きにあてることを繰り返した」などと供述しているという。

 大阪府警は相生容疑者らの逮捕後、容疑の裏付けのため、同市教委や誠風中学校などを家宅捜索。相生容疑者が今回の逮捕容疑のほかにも道本容疑者から利益を提供されていた疑いがあるとみて、癒着の実態解明を進めている。

 相生容疑者は、定年退職を間近に控えた23年3月、PTAの広報誌で「利己的にならず、社会の中で人として誠実に生き、正しいこと、美しいことをできる人になってください」と書いていた。その言葉を信じていた生徒たちの心に残った傷は大きい。

修学旅行汚職 学校利権の闇深く� �制服、教材…業者が争奪戦
産経新聞 2012年1月21日(土)14時56分配信

泉大津の修学旅行汚職:贈賄容疑者に私的旅行手配依頼、中学教職員57人 /大阪
毎日新聞 2012年1月20日(金)12時25分配信

修学旅行の選定めぐり、前中学校長が収賄容疑 310万円の利益提供
産経新聞 2012年1月17日(火)10時51分配信

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